僕にとって転機となったオーディション

stupeur

 もう10年以上も前になるけど、僕にとってすごい転機となった
 映画「畏れおののいて」のオーディションのときの話です。
 転機といっても、それから有名になったとかではないのですが、
 精神的には、この映画を境にとても変化がありました。
 (過去の栄光でしょと言われればそれまでですが、、、汗)

 ある日、マネージャーからフランス映画のオーディションがあるから。
 近藤君出しておくからね。と電話がありました。

 と、一見軽い感じですが、実はこの時点でかなりすごいことでした。
 だいたい映画のオーディションなんて僕は、初めてでしたし。
 しかも、このオーディションは、僕はまったく知らなかったのですが
 有名人が、いっぱい受けることになっていたのです。
 そして、僕は天下のオ〇カープロモーションからの推薦ですから、笑
 この時点で、事務所で大騒ぎというか、かなりもめていたらしい。
 僕の様な無名の人を出すのは、恥ずかしいわけですよ??人材不足みたいになるし。
 でも最後は芸能部の部長さんが、この役は彼にぴったりの役だ!
 名前を書くだけじゃないか!とごり押ししてくれたらしい。本当に感謝!
 この部長さんは、実は僕が最初のドラマのレギュラーに決まったときにも
 まったく実績がないのにもかかわらず、僕が責任をとりますから彼を使って下さいと
 テレビ局にかけあって売ってくれた人です。すごいことであります。
 このドラマに出たか出ないかの最初の一歩って、普通だいたいの場合みなさん、
 たいへん苦労するところだと思います。資料を出せって言われても無いわけですから。
 大げさですけど、人類が月面に降り立つような瞬間ですよ。
 それを、僕に会うこともなくドラマが決まるのは、さすが大手プロダクション!
 本当に心からの感謝であります。

 話は戻して、オーディションですね。そんなわけで、大手ですから?
 書類は通りまして、一次オーディションです。

 それで、ええ、遅刻しました。爆

 僕はよくCMのオーディションやNHKの連ドラのオーディションのように
 大きな部屋に、大勢の人が、オーディションシートを持って待っているのだと
 勝手に想像していたのですが、、、
 ビルの入り口で、キャスティングの人が、いらいらしながら待ってました。
 近藤さんですか?すぐ、はじめますから、こちらに来て下さい!
 と部屋に入るなり台本を渡されて、それに目を通すもまもなく
 オーディションルームへ、カメラだけのオーディションです。
 まじ、初見の台本をただ読んだわけですよ。笑

 今、思うとそういうことなんですよ。有名人がいっぱい来るので
 誰が、オーディションに来たかということは重要機密事項なんですね。
 だから、誰とも会うことのないように、時間が正確に区切られていたんだ
 そこへ僕は、遅れていったから、イライラしていたんですね。すみません。
 おかげで僕は、台本を雑念無しで、ただ読むことができました。笑

 それから、1ヶ月以上はたっていたと思うのですが、
 一次通過しましたから、二次用の台本を覚えて下さいという通知が!
 もう、とっくに終わったと思っていましたので、映画の資料とかは
 全部捨てた後でした。爆。今度は監督さんが来日するし、やべ~誰だっけ?
 事務所に怒られないようにそれとなく聞いて、調べ物を始めました。

 まず制作は、、、え~二年連続でカンヌ映画祭でパルムドールに輝いている!!
 監督さんは、、お~セザール賞7部門受賞!げげげ
 ひょっとして、これって、メジャー映画??少しプレッシャーが、、

 台本は5分程度の内容、しかしがっちりした内容。フランス語の翻訳のせいか
 ひどく言い回しが覚えづらい!しょうがないので、
 タイプの違う二人の女優さんに頼んで、稽古に付き合ってもらいました。
 そして、米倉〇子さんとかを指導していた先生にみてもらいました。

 そこで、くだらない作戦をねりました。爆
 僕:「どうせ、受かるわけないんだから、思い切って、このシーンはシビアな
 シーンだけど、ヘラヘラしてやったらだめかな?」
 先生:「うーん、賭だね。でもヘラヘラするのは近藤君の持ち味でもあるから
 いいんじゃない?やってみれば?」
 僕:「へへへ、やってみる~~。」

 そして、オーディション当日、僕はどうせ、フランス語なんてさっぱりなので
 まったく語学もせずに行ったら。監督さんが、How do you do?って、
 しまった英語で来た!どうやってかえすんだっけ?How do you do?汗
 How are you? げっ、How ,,ちがう、Fine thank you.汗汗
 それから、スタッフの紹介があり、自己紹介して、さて台本を
 この時、関係ないスタッフは部屋の外へ、(たぶん役者への配慮です)
 相手役をしてくれるのはスタッフではなくちゃんと女優さんです。
 しかも、きっちりセリフを覚えてきている!!すげ~~。やりやすい!

 そして、作戦通りヘラヘラとやってみた。
 で、終わった瞬間に監督が、怒る怒る。通訳を従えてダメだしすること
 約10分ぐらいしたかな?君は解釈を間違ってると、まあそうなんですけど。
 それで、さんざん注意されて、終わるかと思ったら

 監督:「君は、もう一度、トライしてみるか?」
 僕:「はい」(よろこんで)笑

 普通バージョンをしてみました。こっちは何度も稽古してきたしね。
 相手の女優さんとも、とても組みやすい感じだったので、
 まったくフラットに芝居をしました。

 終わると監督が、キャスティングの人へ
 「彼のスケジュールはどうなってる?」
 無茶苦茶慌てて資料をひっくり返しているキャスティングさん。
 まったくノーマークだろうし、そんな資料はないと思ったので、
 僕「まったく予定はありません」
 監督「そうか、何か仕事が入りそうならすぐに連絡をくれ」

 え~~どうして?まあいいや、と挨拶をして帰る
 やたらと愛想の良いスタッフ、こういう愛想の良い時って絶対落ちてると
 思ってました。爆。単に日本に旅行に来てテンションが上がっていたのかも?笑

 数日後、芸能部とモデル部の両方から合格の通知を頂きました。
 マネージャー:「近藤さん、フランス映画とか見たことあります?」
 僕:「記憶にないと思います」
 マネージャー:「だめだめじゃないですか~、今、銀座でアメリやってますから、
 一緒に見に行きましょう。相手役になるかもしれないしね」
 僕:「はい」

 そして、マネージャーに連れられて、アメリを見ました。面白かった!
 これが、ぼくがフランス映画にはまりはじめる第一歩です。笑

 メディカルチェックを受けたりするときに、キャスティング情報が入ってくるのですが、
 そう思うと、僕はかなり早くに決定を頂いたわけです。主役よりも前に決まった。
 これって、どうなんですか?日本でもこういうことってあるのですか?
 よく、主役が決まらないと、バランスがわからないので脇が決まらないって
 聞いたりしましたから、、、それで勝手に相手役を妄想していました。失礼。

 そして、夢としか思えないフランスでの撮影
 パリのシャンゼリゼ通りを一人で歩きながら、
 フランスで映画撮ってる、俺って、誰?こんなこといったい誰が想像できた?
 人生って、本当に先が読めない、チャンスは必ず来るからっていう、冗談もあるけど。
 ほんとうに役者を続けていて良かったってこの時こころから実感しました。
 セーヌ川にかかる橋から、夕日を眺め、すべてのことに感謝という言葉が浮かびました。

 僕は、相変わらず売れていませんから、今もひどいことを言われます。
 才能がないとか、売れないタイプの人だとか、役者に向いてない人だとかね、、
 相手が弱いと勝手なことを親切に言ってもらえるわけです。
 だから、今仕事がまったくないんでしょう??ってね。
 でも、そんなこといったい誰が、決められるのだろうって、今は思えるわけです。
 ほんとうに、皆さんのおっしゃることはごもっともなことばかりなんですけどね。

 地球の裏側で、
 イヴモンタンカトリーヌドヌーヴモニカベルッチソフィーマルソージュラルドバルデュ
 シルビーテステュードリュデュビーヌサニエ
 さんたち大御所にトレビアンと言ってきた監督が
 同じ映画という土俵で、ブラボーと言ってくれた。
 ドイツ金熊賞最優秀女優賞、フランスセザール賞最優秀女優賞に輝いた女優さんに、
 カットがかかった瞬間にブラボーって、抱きつかれた経験って、?何?

 だからですね。
 監督さんやら、演出家さんやら、プロデューサーさんに冷たくされて落ち込んでいる人
 あまり気にすることないですよ、だれにでも好かれることは無いんですよきっと。
 すごくニッチなところで、突然気に入ってくれる人が、いるかもしれないんですから
 昨年やった芝居でも、まったく不評だったと思いますが、
 僕の知らない、関西のおばあちゃんに、「あんた、おもろかったわ」と言ってもらったとき
 ああ、この一人の人で、OKだと思いました。爆、あとは、悪口言って下さいってね。笑
 本当に真摯に演劇に取り組んでいけば、それでいいんですよきっとね。
 才能がないと思って悩んでいる方、連絡下さい。一緒に活路を考えましょう。
 だから、夢のある仕事にしましょうよ。
 結果がすべてだなんて、言わせたら、芸能界全体の負けですよ。
 お金を食べてるんじゃないよ、夢を食べてるんだよって、
 言ってやりましょうよ。     青っ!

 後日談、
 この写真は、横浜フランス映画祭の時の舞台挨拶の様子です。
 僕は、無名なので招待されていませんでした。自分でチケットも買ってました。爆
 でも監督の性格からして、やばいと思ったのでスーツは着ていきました。笑
 名簿にも載ってないので楽屋へも入れず困っていたら、
 バンサンペレーズさんが、入れてくれました。
 楽屋ではフランス人にインタビューをいっぱいされました。(聞いてないし)
 みんな初めて会う人なのに、僕が近藤だということを知ってました。驚
 そして、客席に戻って、開演5分前にスタッフが飛んできて、すみません舞台挨拶を
 お願いしますって、席はこちらでご用意しますって、もう買って入ってるんですけどね。笑
 そして、舞台挨拶していたのですが、この時、僕のことに懐疑的だったマネージャーさんが
 大きな声で、かけ声をかけてくれました。嬉しい。涙。
 みなさん、ありがとうございました。

 

 


Copyright(c) 2013 伝ふプロジェクト All Rights Reserved.