自我を作る皮膚
さて、皮膚は第三の脳である、と宣言しました。では皮膚がなくなるとどうなるか。言うまでもないことですが、こんな実験は出来ません。皮膚は体内の海を護るバリアです。その三分の一が失われただけで、ヒトは死んでしまいます。動物実験でも同様。脳なしカエルはしばらくは生きていますが、皮なしカエルは生かしておくのが難しそうですし、ダメージが大きすぎてまともな生理状態の観察は不可能でしょう。
しかし、「皮膚感覚」をある程度遮断する実験なら、過去に試みられたことがあります。1950年代、アイソレーション・タンクという装置をJ・C・リリー博士が考案したのです。これはすべての外的刺激を遮断して瞑想にふけるための装置です。
タンクは防音処置が施され、照明はなく、呼吸装置だけがあります。内部は皮膚表面温度と同じ34度の硫酸マグネシウムの濃い水溶液で満たされ、はだかで入った人はふわりと浮いた状態になる。この装置の中では視覚、聴覚刺激が遮断される他、皮膚感覚、重力などの体性感覚(筋肉、骨などが受容する感覚)も極端に少なくなります。
もともと優れた脳の研究者であったリリー博士は、その装置の中で自らの意識が肉体を離脱することを感じました。そこまでならいいのですが、されに離脱した意識が異次元の理性と対話を始めたと記述しています。
気功とは何か
気功には「外気功」と「内気功」があります。気功師に治療してもうといった他人の気を遣うものが、外気功。太極拳のように自分で自分の気を調節するのが内気功です。これらの現象は別々に解析されなければなりません。
今、私が「気」になっているのは「外気功」の気、あるいは「殺気」「気配」の気です。うつ病の後遺症に苦しんでいたとき、お世話になった「外気功」の治療院では、患者の身体を金の棒で摩擦する施術を行っていました。効き目は顕著で、睡眠薬の類いが一切効かなくなっていた私が施術中、深い眠りに落ちてしまっただけでなく、翌朝には「気力」が充溢しているのを感じました。そのうち抗うつ剤も止めることができました。
もちろん金に秘密があるはずです。他の金属は大抵ピカピカしていても、空気中では酸化皮膜がすぐできます。しかし金は金のまま。つまり純粋な電気伝導体として表面を保っています。
中略
金と皮膚との接触面に電場が生じていた可能性が高いということです。それが、皮膚に作用する。さらには皮膚の内部の細胞、神経にも作用する。これが私をうつから救った外気功のメカニズムの一つではないかと考えています。
「非因果律的世界」を護る皮膚
因果律というものがあります。要はすべてに原因があり、結果があるということです。言い方を換えれば、過去が未来を決定する、ということです。現代社会において、これを信じない人は稀でしょう。ギリシャ哲学、インド哲学に始まり、ルネサンス以降の西欧科学の基礎であり、現代科学の根本です。
ところが、日本の生物物理学の祖とも言うべき渡邊慧博士は、恐るべき発言をされています。量子力学に大きな貢献を成した物理学者シュレディンガーによれば、生体は外部環境から負のエントロピーを取り込み、正のエントロピーを放出して「内部環境」の秩序を維持しているシステムです。渡辺博士はこのうような生体の「内部環境」では逆因果律とでも言うべき現象、すなわち未来が過去を決定する、という原理もありうるのではないか、と提言されています。
因果律、つまり過去から未来への時間をあからさまに見せるのは、熱力学第二法則、すなわちエントロピーの増大の法則です。水に落としたインクが拡散することはあっても、一度拡散したインクが自然に再集合して濃い一滴に戻ることはありません。こういう現象を「外部」で観察することに慣れてしまった私たちは、それがすべてのものの理であると「錯覚」している。そう、それは「錯覚」に過ぎない。時間が過去から現在へ、そして未来へ流れるのは閉鎖系でしか見られない現象です。生命は閉鎖系ではありません。ですから時間の流れが存在しない、あるいはその方向が私たちの常識とは異なっている可能性がある。
プリゴジンらが確立した開放系の熱力学では、シュレディンガーが予見したことが数字的に照明されています。すなわち無秩序から秩序が立ち現れる。ここでは因果律は成立しません。つまり、生体の内部環境では原因が結果をもたらす、あるいは過去が未来を決定する、そんな「常識」が通用しない可能性がある。
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