連塾-方法日本Ⅰ 神仏たちの秘密 松岡正剛

仏教世界観の基本

 これがいわゆる「悟り」ですが、何を悟ったかというと、さきほども言いましたが、「一切皆苦」ということを悟ったんです。人間は苦しむものだが、その「苦」は捨てられるもんじゃない。捨てるのではなくて、むしろそれを受け入れて、そのうえで自身をハイパーにしていったほうがいい。そいうすれば気持ちが落ちつくというのです。さらに「諸行無常」「諸法無我」「涅槃寂静」ということを悟った。これを四法印と言います。
 まとめていえば、諸行は無常であり、諸法は無我である。だから涅槃寂静、すなわち心静かに日々を送ろう、ということです。ここまでは三宝印とも言いまして、「一切皆苦」はこれらの大前提なんですね。
 次に、これはとても重要なことですが、仏教とキリスト教やユダヤ教との最大のちがいは、ブッダは神のお告げを聞いた人ではなかった、ということです。
 だから預言をしなかった。ひたすら現実を見つめた。そして「中道」、すなわち「中」という思想にたどりつく。そこが他の世界宗教とまったくちがうところで、たった一人の人間が現実を自覚したということが仏教の始まりなんです。それが三宝印であり、四法印です。そこにはヤーウェの声もなかったし、荒野に彷徨えるヨハネの声もなかった。そして黙示録も預言者もいなかった。

 

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