身体から革命を起こす 甲野善紀 田中聡

 著書のなかで、ナンバを武智鉄二さんが、命名したいきさつが書かれている。

 すなわち、鍬をふるったりするときの「農耕生産のための全身労働においてとられる姿勢で、右手が前にでるときは右足が前に、左手が前に出るときは左足が前という形」からの命名である。
 ただし、昔の日本人がそのように腕を振って歩いていたというわけではなく、半身ごとに入れ替えるようにしていたのだが、それを「農耕生産における半身(はんみ)の姿勢(たとえば鍬を振り上げた形を連想してみるとよい)が、そのまま、歩行の体様に移しかえられ」たものと見たのである。
 つまり、日常の歩法のうちに、水田耕作という「原初生産性」に由来する動きの原型を透視し、その原型にちなんで、ナンバと名付けたのである。

 このナンバの動きを技として考えた。半身動作研究会を主宰している中島章夫さんの言葉も書かれている

 そして「中心軸を「軸」ではなく身体を左右に分ける切断線とし、左右の軸を動作の基準とする」のが、ナンバの動きであると理解している。
 もし、中心できちんと切断できずに癒着していると、半身のつもりで動いていても、術的な効果は期待できない。むしろ不器用な印象になろう。術的な動きが出来るようになるには、まず半身をひとまとまりとした左右の動きが、きれいに分離しなくてはならない。
 そのように動きを分離することを「身体を割る」という。

 そして、甲野さんが歩く様子を作家の田中さんがこう書いています

 私は、甲野さんの動きは、ナンバではなくて、「すり足」と呼んだほうがいいと思います。床の反力を、腰で吸収してしまって、上半身に伝えない。それが、「すり足」の特徴です。ふつうは、足が出ると肩は逆にふれて補償しているわけですね、八の字状に。すり足になると、肩は動かないで、足だけになる。つまり上下動・左右動を抑制します。
 すり足じゃなくても、日本の舞踏の動きはすべて、足をついたときの衝撃を上半身には伝えないようにしています。ゆっくり歩くとか、小股で歩くとかというのも、その方法です

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