ゾーンの入り方 室伏広治

一瞬で全身に力がみなぎる逆転の呼吸法ー超上級者編

一般的に呼吸というと胸腔を中心に行うことが多いのですが、胸で呼吸しようとすると、胸や肩が上下してしまいます。スポーツの具体的な例でいうと、野球のピッチャーや陸上のやり投げ選手がオーバースローで投げるときに肩が回らない原因にもなります。そして、結果として下半身の大きな筋肉が使いにくくなるのです。腹式呼吸のように呼吸を意識的に行うと、背中側は全く膨らまずおへそあたりが前後に膨らんだりしぼんだりして全面だけに意識が行きやすく、上下左右前後、体幹全体が締まってこないのです。
では、「逆転の呼吸法」の実践に移りましょう。
息を「ハー」と吐くときの筋肉の動きをしながら、息を吸うのです。
人間が呼吸するときの筋肉の動きは、吐くときと吸うときで違います。吸うときは胸や腹がふくらみ、吐くときは胸や腹がしぼみます。それをあえて「息を吸うときに、ふだん息を吐くときの動きをする」というのが、この呼吸法です。

それでは、まず、ゆっくりと鼻から息を吸い込み、口をわずかに開けながら息をハーッと口から吐き出してゆきます。しっかりと体幹部分に力が入るまで吐き出します。そして、吐ききったら、今度はゆっくりと鼻から吸い込みます。ここまでの呼吸をまず三回行います。ポイントは吐ききったときの体幹部の形や筋肉の収縮状態をしっかり覚えておくことです。腹横筋、内外腹斜筋などの筋肉群、脇の下、背筋群が、どういう状態で吐き出しているか、すべて吐ききるまで吐き出しながら、よく覚え込んでください。
では、次に四回目に吐ききったときに、いま息を吐き出すときに使った筋肉の動きをそっくりそのまま再現させながら息を一気に吸い込むのです。体幹部が膨らもうとするところを、あえてさっき吐き出していたときと同じく筋肉を縮ませるように働かせて、ヘソのしたの丹田に向けてギューッと圧をかけるようにして吸い込むのです。この筋肉の動きで吸い込むことで一気に力が入ります。
一分間、この逆転の呼吸法をすることで、集中力とパワーが充満してくるはずです。

 

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