3Dドキュメンタリー「フラッシュバックメモリーズ3D」
3D映画で何を楽しみにみていますか?
奥行あるパースで勢いのある動きが迫ってくる臨場感。
私は『アバタ―』をみて、すごかったけれども デ○ニーランドのアトラクションでそういうのあったような。。。と思ったものです。
2時間のストーリーのなかで映画ならではの3D体験とはなんなんだろう?
『フラッシュバックメモリーズ3D』というドキュメンタリーは そんな3Dブームが落ち着いたときに、新たな一石を投じている作品でした。
”ディジュリドゥ”というアボリジニの民族楽器奏者の日本人男性のGOMAはこれから活躍する、というときに交通事故に合い、 記憶が留まりにくくなる高次脳機能障害となってしまう。
リハビリのかたわら楽器演奏をすると、日常の支障から解放され、体が覚えていたディジュリドゥのリズムを刻むことができた。
過去と同じようにはいかないなかで、それでも今を生きるために、人は変わることができるという力強いメッセージ。
彼の演奏をスタジオ収録し、ライブ演奏のバックの暗闇に3Dで過去の映像が浮かび上がる イベント映像に近いライブドキュメンタリーである。
過去の輝かしい思い出や家族のこと、事故後の記録ノートやコメントが3Dの層を利用し、
レイヤーとして暗闇に浮かび上がる。
記憶しにくい未来のGOMA自身にむけたメッセージテロップも暗闇に浮かび上がり、 脳内イメージを再現したようにも錯覚してしまう。
画面の奥から過去の出来事⇒画面の前面でライブしている現在⇒画面越し(にいると想定する)の未来の主人公
と3D空間を時系列にそろえたことで、アトラクションとしての体験よりも、 「今を生きようとする歴史」を体感する3Dという仕掛け。 人生が3Dで表現できたこのドキュメンタリーは、音楽のリズムにのって観客に強烈な共体験になっていた。
話しはかわりまして、 この作品にある、遠近法にとらわれない時間軸の3D表現。 実は日本の絵巻物やアニメーションを見ていると似たような発想がよく出てくるのではと思います。
風景を技術(遠近法)で描く、”その瞬間”をとらえたい西洋絵画と
風景を空気(雰囲気)で描き”その場面の流れ”をとらえたい日本絵画。
そんな対比を思い出してしまいました。
せっかく目新しい技術の3D映画に、現実的なルールで映画を再現するよりも、
「画面上に空間がつくれるなら、どういう表現につかうのか?」
というところで、映画の革新が楽しみになる1本でした。
「フラッシュバックメモリーズ3D」あらすじ